2作品
両親を亡くした少女が引き取られた館には、十年も鍵をかけられた庭があった。荒れた蔦の奥で仮死のように眠る小さな竜は、庭が緑を取り戻す歩みと同じ速さで、ゆっくりとその瞼を開いていく。
断崖に眠る石竜を日々仰いで育った少年・悟。富と武勇と弁舌と詩を誇る者たちが次々に「竜に見込まれた男」を名乗るが、竜は身じろぎ一つしない。老いた堂守となった悟だけが気づかぬまま、竜の瞼がただ一度、静かに開く――大いなる岩の顔を翻案した寓話。